約 891,149 件
https://w.atwiki.jp/multiple/pages/211.html
――――――geass ◆Wott.eaRjU 三人の少女が街を目指している。 その内の一人――盲目の少女、ナナリーは別の少女により背負われている。 少女の名はブレンヒルト・シルト。 そして二人からほんの少し離れた位置に居る少女は園崎詩音。 とある事情から行動を共にする事になった三人の内、二人は視線を向けていた。 自分達が今向かおうとしている街中――ではなく、鉄橋の方へ。 たった今、自分達が渡り終えた其処を。 ブレンヒルトと詩音はそれぞれ見つめていた。 「まったく、しつこいのは嫌われるコトがわからないのかしら」 やがて溜息に似た呟きがブレンヒルトから漏れる。 どこか殺し合いの場所には似つかわしくないセリフ。 されども声色からは決して余裕の色は見られない。 人知れず冷や汗を流すブレンヒルトの表情は真剣そのものだ。 事実、ブレンヒルトは目の前に危機が迫っている事を認識している。 「……悪いけどナナリーを頼むわ。それと何処か安全な場所へ隠れて」 「え、ええ……」 暫しの逡巡を経てブレンヒルトは詩音へ託す。 実に憎々しげな表情は、事態があまりいい方向へ行っていない事による所以のものだ。 詩音の肩を借りて、ナナリーの小柄な躯体をそっと預ける。 フラフラと、おぼつかない足取りだがなんとか立つ事は出来た。 両脚の力を失っているナナリーにはきっと酷な事だろう。 なんとなくの状況は察しているのだろうが、不安は消えていない。 親鳥から見捨てられた小鳥のような、なんとも言えないもの寂しさがブレンヒルトの心を捉える。 ――止めるべきか。 詩音は未だ知り合ったばかりだ。 なにやら変わった力があるようだが、この場では珍しい事ではない。 自分の左腕に埋まっているものや、概念兵器の存在を忘れてはならない。 しかし、詩音が完全に信頼出来るかと聞かれれば自分は一体どう答えるか。 即答は出来ない。だけども仕方がないとブレンヒルトは自分に言い聞かせる。 流石にナナリーを抱えながらでは自分の行動に支障が出る。 その支障が重大な結果を招いてしまえばどうしようもない。 「ナナリー、少しだけ待っていて。直ぐに終わらせるから」 故に今、ブレンヒルトに求められているのは迅速に目の前の障害を取り除く事だろう。 使い慣れた鎮魂の曲刃はなく、1-stGの概念兵器すらもない。 だが、どうやら目の前の脅威は自分達を逃すつもりはないようだ。 この先も追跡を受けるなど、正直勘弁願いたい。 ならば、やらなくてはいけない。 ここで終わらせる。 想いと共に左腕に力を込める――いつでもいける。 それは固い意志の現れ。 「ブレンヒルトさん……あ、危なくなったら、絶対に逃げてください!」 ナナリーの精一杯の声が響く。 背中を向けながら、ブレンヒルトは小さく頷く。 有り難い言葉だ。心地よい感触が全身に広がっていくような感覚が走る。 続けて詩音がナナリーと共に駆けて行ったのが足音で判った。 どうやら詩音は何も声を掛けてくれないらしい。 まあ、特に期待はしていないか。軽く自嘲気味に口元を歪ませる。 しかし、その歪みは直ぐになくなり、口元はしっかりと閉じられる。 そして視線を突き刺す。 人間ではない。異形の、つい先程出会ったそいつに送るものは一つの言葉。 「待たせたわね」 律儀に待っていたところを見ると最低限の礼儀はあるらしい。 若しくは先ずは一人づつ始末しようという魂胆なのだろうか。 真実は実際に聞いてみなくてはわからない。 じっくりと聞きだすのもいいだろう。 取り敢えずは力を奪ってから自衛のために出来ることをするしかない。 「……気にするな」 目の前のそいつは憮然と答える。 余程この殺し合いに生き残りたい理由があるのだろう。 紫色に輝く瞳からは底知れぬ意思がひしひしと感じられる。 だが、ここで臆するようでは自分に未来はない。 左腕をゆっくりと正面へ翳す。 「逃がすつもりはない。ここで終わらせる」 そいつの声と同時に、ブレンヒルトの左腕の皮膚が捲れる。 ベリベリと、観ていて気分の良い光景ではない。 そう思っている間に全てが終わった。 一瞬の変化――剣の形を模した、ナノマシンの慣れの果てを己の左腕とする。 それはARMS“騎士”の第一段階の発現の証。 「じゃあ、始めましょう……手加減の程はあまり期待しないように、ね」 「……そちらもな」 そしてぶつかり合うのは互いの言葉。 演目は只人には過ぎた力を持つ者同士の、命の喰らい合い。 ギャラリーは周囲の景色だけ、身守る視線もない。 二人ぼっちの戦いが今、始まりを告げる。 ◇ ◇ ◇ まるで風と戦っているようだな。 数十分程か、はたまたそれ以上時間が経ったのかもしれない。 予めブレンヒルトから奪った十字槍を振いながらミュウツーは思う。 左腕の奇妙な剣も勿論の事、ブレンヒルトの立ち振る舞いがそう感じさせる。 ブレンヒルトの剣による斬撃はそれほど鮮やかなものではない。 恐らく普段は別の武器を使っているため、未だ慣れていないのだろう。 同情はしない。これは殺し合いだ、寧ろ好都合と言える。 こちらにも目的がある以上、つけいる隙があるならば容赦なく狙わせて貰う。 それに、使い慣れていない武器はこちらも同じ条件――気兼ねなどない。 己の意思を込めるように、ミュウツーが十字槍を前に突き出す。 そして己の身を後方へ飛ばしたブレンヒルトを見やる。 (そろそろ、か……追ってきたかいがあった) わざわざ此処まで追撃をしかけた訳は、あの忌まわしい契約のせいだ。 制限時間内に一定量の死亡者が出なければマスターの命はない。 自分が動かずともその条件が満たされる可能性はある。 しかし、万が一満たされないとしたら――不安を消すかのように、ミュウツーは過剰ともいえる追撃に身を費やす。 そして思った。自分の判断は間違っていないと。 先程駆けていった二人の少女はどうやら戦う力を持っていないらしい。 ならば、確実に癒されていく自分の力を必要以上に使う事もないだろう。 やがて腰の回転を加え、ミュウツーは右腕を後方へ引く。 ブレンヒルトの怪訝な表情が視界に映るが気にしない。 勢いを殺さず、そのまま十字槍を投げつける。 (一人ならサイコウェーブを使う必要もない。なら……いける) 撃突。ブレンヒルトは咄嗟にARMSを翳した事で刺突は免れる。 衝撃を押し戻すためにもに、力任せに押し弾く。 その瞬間を狙っていたかのように、ミュウツーが一気に距離を詰めた。 両腕に持つ武器は何一つない。 完全に素手の状態だが、ミュウツーに臆する様子はない。 何かある。ブレンヒルトの本能が警告の鐘を鳴らす。 瞬間。不意にミュウツーの右手からなにかが顔を見せた。 一本の、銀白色の大型のスプーンがそこにあった。 複数の敵を一度に相手にするサイコウェーブとは違う。 一個体を殴りつけるために用意した、念力の結晶ともいえるミュウツーの近接用の武器。 最早身体の一部といってもいい程に、使い慣れた武器がブレンヒルトを襲う。 (そうだ。これでいける……しとめてみせる!) 言葉は発さず、只、冷徹な殺気を乗せてミュウツーが地を駆ける。 ◇ ◇ ◇ 「……良い気になっては困るわ」 横殴りに振られたスプーンがブレンヒルトに迫る。 毒を吐きながらも左腕のARMSで受け止める。 間髪入れずに珪素を主成分とした、金属質の刀身が衝撃に対し僅かに揺れた気がした。 そう思えてしまう程に強大な力。 証拠に、ブレンヒルトの左腕に痺れのような感覚が今もこびり付いている。 食器を武器とするとは、と笑っていられない程の重み。 初めから使用していなかった事を見ると、何らかのリスクが伴うのだろうか。 それとも、単にタイミングを見計らっていただけか――そこまで考え、思考を止める。 一瞬だけ力を落とし、力の向きを変えた。 大質量のスプーンを真っ向から迎えるのではなく、下から弾き飛ばす。 ブンブンと、円回転を起こしながらスプーンがあられもない方向へ飛んでゆく。 だが、ブレンヒルトは碌な喜びを見せはしない。 只、極めて冷静に己の左腕をしなるように走らせる。 (やっぱり気のせいじゃない) 一閃。ARMSによる斬撃が空を切る。 大気のうねりが、一瞬前までミュウツーが居た場所を横断。 次にポタリと、小さな赤い雫が地面に落ちる。 左脚に小さな裂傷を貰いながらも、宙返りの要領で両断を避けたミュウツーと視線が合う。 振るった左腕を戻しながら、ブレンヒルトは確信にも似た思いで認識する。 しっかりとスプーンを掴んだ、ミュウツーの戦意は未だ削げ落ちていないことを。 そして自分の身体に生じた変化を―― ブレンヒルトとミュウツーが、それぞれ陸と空から前方へ身を飛ばす。 ARMSの刀身とスプーンが何度も何度もぶつかり合う。 (私の身体は……以前とは違う。このARMSというもののせいか……) 事実、ブレンヒルトが数時間前から立てていた推測に間違いはなかった。 ブレンヒルトの左腕に埋まっているARMSは単なる武器ではない。 炭素生命体と珪素生命体のハイブリッド生命体――人間を更なる高みに到達させるために生まれたと言われている。 ナノマシン集合体であるARMSは時間の経過と共に身体にナノマシンを増殖。 つまり移植者の身体に馴染めば馴染む程、その特性は上がっていく。 剣といった固有武器の発現 欠損部分の補修、自己治癒力と身体能力の向上、同じ攻撃への耐性反応――等々。 元々並みの人間よりも身体能力が優れているため、ARMSによる付加は大きい。 そして全身にARMSが広がった時こそ、爆発的な力が生まれる瞬間。 今のブレンヒルトの侵食状況ではそこまではいかないが、確実にARMSは彼女の身体に慣れ始めていた。 自分以外の存在と肉体を共にする感覚。 それは決して心地の良いものではないだろう。 しかし、ブレンヒルトには耐え難い程の嫌悪感があるというわけではなかった。 (今の私には絶望的に戦力がない……。 1st-Gの概念を利用出来るものがなければ、これほど無力だとは思わなかったわ。 でも、だからこそ私は……) ブレンヒルトは今は亡き、1st-Gに縁がある者だ。 1st-Gの概念を応用出来る武器でなければ彼女の本領は発揮できない。 だが、ブレンヒルトにはこんな場所で死んでやる理由はない。 故に降りかかる火の粉は払う必要がある――そのために必要なのは力だ。 だから受け入れるしかない。寧ろ喜んで使って見せよう。 この場所か脱出するのは元より、小鳥を――あの子を助けるためにも。 今の自分はいつもと違う。 手持ちの武器も、立ち振る舞い方も。 ならば、違う戦い方で攻めてやるまでだ。 想いを糧に、ブレンヒルトは左腕のARMSへ己の闘争本能を注ぐ。 「あああああああああッ!!」 自分らしくもない、まるでLow-Gの面々がやるように。 俗に言う気合いを己に焚きつかせて、左腕の速度を上げる。 先程までほぼ拮抗していた状況が変わり、徐々にブレンヒルトの方へ勢いが傾く。 いける。微弱ながらも、表情を険しく歪ませたミュウツーがブレンヒルトにそう思わせる。 ARMSは一個の生命体だ。きっとブレンヒルトの想いを鋭敏に感じ取ったのだろう。 まるで誰か心強い存在と共に戦っている感覚が、頭の中でチカチカと点滅する。 時間の経過と比例するかのように、銀色の刃がスプーンを削り取っていく。 このまま押し切る。その時、ブレンヒルトは視界の隅から何かが此方に迫ってくるのを確かに見た。 そして目の前に広がったものは――大きな花火。 「ヒャッハァ! 命中ッ!!」 耳障りな男の声、ラッド・ルッソの声であった。 ◇ ◇ ◇ 「やっぱ撃ってみるもんだわ。いや、俺も当たればいいなーとは思ったが……まさか本当に当たるとはな。 神様ってヤツが居るなら感謝してやるぜ、マジで」 バズーカを担ぎながら、ラッドがブレンヒルトとミュウツーの方へ歩き出す。 距離にして10メートル程の位置を我がもの顔で取った。 油断なくスプーンを構えるミュウツー。一方のブレンヒルトは蹲ったままだ。 それもその筈、バズーカの砲弾を真正面に喰らったせい――但し、直前にARMSで叩き斬る事は出来たが。 しかし、全くの無傷で済むわけがない。 爆風に巻き込まれ、ブレンヒルトの全身には痛々しい火傷が生まれている。 そんなブレンヒルトの様子を見てか、ラッドからは悪意に満ちた笑みが零れる。 「おいおいおいおいおい。まだくたばんじゃねぇぞ、女ッ! てめぇにちょん切られた分が残ってんだ。まさか忘れてねぇよなぁ!」 ブレンヒルトは何も答えない。 只、忌々しげにラッドを見返すだけだ。 抵抗の意思は消さない。諦めなどという文字はありはしない。 満足げに眺めながらラッドはぐるりと首を回す。 「それとてめぇだ、宇宙人野郎。 てめぇのお陰でまた痛てぇ思いをしてきたんだ……思い知ってもらうぜ、てめぇの命ってヤツでよぉ!」 その時になってミュウツーは悟る。 ラッドの胴が嫌に赤黒く、次第に傷が治っている事に。 ミュウツーはラッドの身動きを止めるために、確かに大木に彼の身を貫かせてやった。 だが、ラッドは万全の状態とはいえないまでもこの場に居る。 自然と行き着いた結論は――ラッドが自分の予想を越えていた事。 ラッドは持ち前の怪力を頼みに己の身を大木から引きちぎることで、その拘束から逃れていた。 勿論、想像を絶するほどの痛みはあっただろう。 どんな傷さえも瞬時に修復する“不死者”といえども、痛覚を消す事は出来ない。 しかし、ラッドは打ち勝った。 不死者元々を抜きにした本来のタフさ、そして何より―― 「ああああああああ!サイッコーーーーーーーーーーーーーーーーだ!! てめぇら二人、まとめてブチ殺すチャンスが回ってきたんだからなぁ、ヒャハハハハハハハハハハハ!!」 ブレンヒルトとミュウツーに借りを返す。 決して諦めるてやるつもりはない、強い意志がラッドを動かす。 更に距離は詰めた。もう目と鼻の先に、ブレンヒルトの姿がある。 ラッドはが右脚を振るう。道端に転がった石ころを蹴り飛ばすように。 但し、石ころには不相応な程の殺意を込めながら。 「がっ!」 衝撃。痛いと思うとほぼ同時にブレンヒルトの華奢な身体が吹っ飛ぶ。 何度も身体を打ちつけながら、やがてある程度の位置で止まる。 苦しげに肩を震わせるブレンヒルトをラッドが追う。 小さな子どもがサッカーボールを追っていくような足取りで、ブレンヒルトの様子など意に介さずに。 どうやら先ずはブレンヒルトの方に片をつけるらしい。 時折、もう一人の獲物であるミュウツーの方を見るが、ラッドは特に仕掛けようとはしない。 同じくミュウツーも自分に向けられた視線には睨みを返すが、行動を起こそうとする気配までは見られない。 不思議な事ではないだろう。ミュウツーの目的は一定量までの参加者の減少。 自分の手を使わずとも、参加者が減るというなら邪魔をするつもりはない。 だが、準備を怠っているわけではない。 次に狙われるのは自分だ。よってこの間に念力の補充に集中。 状況の成り行きには意識を向けて、ラッドがブレンヒルトに近づくのを見ながらミュウツーは次の出方を窺う。 そんな時、ミュウツーの両耳が音を捉え、直ぐに後ろを振り向く 其処にはミュウツーの予測した未来には描かれなかった光景があった。 「ブ、ブレンヒルトさんから離れてください……!」 その原因は盲目の少女、ナナリー・ランぺルージ。 ◇ ◇ ◇ 『なにをしている、ナナリー! さっさと逃げろ!!』 (ごめんなさい、ネモ。でも、私はブレンヒルトさんを助けたい……) ナナリーが此処に居る理由。 言ってみれば簡単な話だ。 とどのつまり、ナナリーはブレンヒルトだけを置いて逃げる行為がどうにもしたくなかった。 初めて会った時から優しく接し、車椅子でしか動く事の出来ない自分も見捨てないでくれた。 出会い方や性格は違うけども、まるであのクラスメートのように。 嬉しかった。同時に信頼できる人だと思った。 だから――ナナリーは今、此処に居る。 もう一人の自分であるネモの制止を振り切って。 ブレンヒルトの苦しげな声が聞こえ、思わず声を上げていた。 『ならばマークネモを呼ぶ! そして私が奴らを殲滅してやる、それで良いだろう?』 (ダメ! マークネモを使えば、ブレンヒルトさんや園崎さんも危ないわ!) 『ちっ!そうだ、そもそも――』 ナナリーの意思にネモは苛立ちを隠せない。 ネモはナナリーの守護により己の存在を自立させているため、彼女の指示に背くことは出来ない。 しかし、不満や不平をナナリーに届ける事は出来る。 故にナナリーにはネモが次に何を言おうとしているのかが何となく悟っていた。 自分が今、この場所に立てる理由にネモは矛先を向けようとしている。 『何故、園崎はお前の意見に従った!? ブレンヒルトが行けと言ったんだ、わたし達は彼女の意思を無駄にしないためにも逃げておくべきだったんだ!』 ネモは怒りの感情を、今、ナナリーに肩を貸している詩音の行動へ叩きつける。 ネモの声が聞こえる者は、この場ではナナリーただ一人。 当然、詩音にその意思が伝わる事はないため、代わりにナナリーがその疑問を受ける形となり、返答に困ってしまう。 そう。ナナリーもブレンヒルトが心配だと思うと同時に、出来れば彼女の言葉を尊重させたかった。 あの後押しがなければ、詩音がブレンヒルトが心配だと言わなければ此処には居なかったかもしれない。 「あん? これはこれはどうしましたか、お姫様? どうやら眼の方が少しばかし不自由してらっしゃるようですが、わたしめに何用ですか……なんてな」 怖い。先ず第一にナナリーが思ったのはそれだ。 面白がっているのか、変な言葉遣いで自分に言葉を掛けてくるラッドが酷く異質な存在に感じる。 きっとその近くに居ると思われるミュウツーも恐怖の対象の一つだ。 そして二人の傍にはブレンヒルトも居るだろう。 だが、自分には出来る事はこれといってない。 やはり姿を見せた事はあまりにも危険過ぎただろうか。 しかし、少なくとも今この時だけはブレンヒルトへの危機が免れているのは事実。 良かった――自分自身への危機を頭の隅に留めながら、内心ナナリーは思う。 そんな時――ふとナナリーは自分の首に何かが覆ったのを感じた。 「と、止まりなさい!」 なんだろう。急であったこともあり、ナナリーの思考が一瞬止まる。 例の如く両目に映るものは漆黒の闇だけだ。 両耳を頼りに――その声が詩音のものだとわかった。 途端にナナリーは嬉しさと申し訳なさで一杯になった。 きっと詩音は自分を庇いながら、ラッド達を牽制しているのだろう。 そうだ。もしかすれば誰かが通りかかるかもしれない。 兎に角、この状況では時間を稼ぐ――それが最善の策に違いはない。 詩音もそれがわかっているからこうしている。だが、ナナリーは気付ける筈もない。 詩音が浮かべる表情には別の感情が張り付いていた事に。 「……取引しませんか。私の持つ情報と――この子とその女、二人の命で」 それは酷く冷たい意思を告げる言葉であった。 ◇ ◇ ◇ 「へぇ、こいつはまたまた驚いた。嬢ちゃんはお仲間じゃねぇの?」 「誤解しないでください。別に私はこの子達とお友達……ってわけじゃありません」 表面上は冷静さを保っているようにも見える。 されども、内心、詩音の心境は気が気ではなかった。 確かにこの場に戻ろうと言いだしたのは自分だ。 いずれ殺す事になるブレンヒルトの力を知るためにも情報が欲しかった。 追撃者は一人、ならばナナリーを盾にしている間に十分に逃げ切れる。 そう思っていた筈であった。 (まさかもう一人増えているなんて……それにあの女ももうやられている。まったく、使えない……! でも、まだまだ……!) だが、目の前にはいかにも危なそうな男が居る。 園崎組でもこんな男は見たことがない、明らかに異常な存在だ。 人間をいとも容易く蹴り飛ばす男と戦いにでもなりにしたら――思わず冷や汗をかきそうになった。 支給品のお陰で、異能とも呼べる力を持ったものの、真正面からの戦いで必ず勝つ自信は生憎ない。 させない。思考をクールに、自分が戦わずに済む状況を呼び込む。 何故なら自分はこんな場所では絶対に死ねない。死ねない理由がある。 悟史君ともう一度会う――そのためにはどんなものも投げ捨てる覚悟は勿論だ。 だから、こんな卑怯染みた真似すらも取ることが出来た。 「……話を戻しましょう。この子、ナナリーちゃんとその女は貴方方の好きにしてもらって結構です。 それと私が持ってる情報も教えます。 これでも結構な人と会いましたので……貴方方の知り合いとも会ったかもしれませんよ」 俗に言う裏切り行為。 盲目のナナリーが軽く口を開け、呆然とした表情でこちらを見るが罪悪感はない。 だって自分には彼が居るのだ。彼の元に戻るためにもこの場を切り抜けなければならない。 その過程で、誰かを犠牲にする必要が出てくるなら喜んでやってみせよう。 魔女だの悪魔だのと罵られても構わない。 只、彼が居るならそれだけでいい。 狂気とも取れる、ありったけの愛情が今の詩音を支えている。 そうだ。恐れる者は何もない――暗示をかけるように己を励まし、ラッドへ言葉を突き付ける。 「だから、自分の命は助けろ……と言いたいわけだな。ふんふん、なるほどなぁ……悪くないんじゃね」 「そ、それなら――」 途端に詩音の表情に確かな喜びが花開く。 ホッとした。頭上に乗っていた、不安という重りが消えたような感覚がある。 ならばさっさとナナリー達を引き渡し、自分はこの場から立ち去ろう。 思わず気が緩む詩音。その瞬間、ラッドが狙い澄ましたように声を発した。 さも愉快そうな笑みを浮かべて。 「――ところがギッチョン! 俺は嬢ちゃんとの約束事に興味はねぇんだ!」 そこでだ、宇宙人野郎。ちょいと提案があるんだが」 この男は何を言っているのだろう。 顔を背けたラッドを凝視しながら詩音は思う。 詩音程ではないが、ミュウツーの方にも驚きはあったようだ。 無言でラッドの言葉に耳を傾け、そしてラッドは。 「俺とてめぇの二人。どっちがこいつら三人を多くブッ殺せるか勝負しねぇか? てめぇは只、ブチ殺すだけじゃつまらねぇ。どうせなら殺す前にてめぇの鼻でも明かしてやりてぇからな。 そんでその後は俺とお前の潰し合いだ……やろうぜ、俺の方はいつでも準備はオッケーってやつよ。 なぁ、やろうぜ――愉快に愉快に殺りまくろうぜ!?」 詩音の頭の中で何かが崩れる。 前提が間違っていた。交渉を行うのには最低限の条件がある。 相手が少しでも自分の話に関心を抱くかどうか。 そして今回のケースは――生憎、ラッドにはその気が全くなかった。 ラッドの口から紡がれた恐ろしい言葉に詩音は青ざめる。 「……良いだろう」 「ヒャッハァ! もの判りが良くて助かるぜ」 「な、なんでそんな話になるんですか!?」 「あー? だからお前はもういいわ、ちょいと黙っといてくれや」 ミュウツーにとってもラッドの提案はそれほど悪くはなかった。 どのみちラッドとの戦闘は避けられないだろう。 ならばその前に脱落者の数を増やしておくのは得策だ。 別に勝負の勝ち負けはどうでもいい。参加者を減らすことが目的だ。 先ずは三人を殺し、後は逃げるなりもしくは殺すなりしてこの場を終わらせる。 同情は捨てる。そんな感情は自身の破滅を招くだけなのだから。 しかし、必死に抗議の言葉を叫び続ける詩音から顔を背けたのは何故だろうか。 僅かな疑問を抱きながらも、ミュウツーは歩き出す。 顔を上げているものの、未だ立ち上がれそうにもないブレンヒルトの方へ。 そんなミュウツーを見て、ラッドも歩を進めていく。 「というわけだ。だから嬢ちゃんよぉ――さっさと死ねや」 ゴキゴキと両拳を鳴らしながら、ラッドは詩音に宣告する。 こんな馬鹿な。誰に言うわけでもなく詩音は心底思う。 何故、自分がこんな目に遭わないといけなのか。 自分は只、悟史に会いたいだけなのに。 もし、慈悲深い神様が居るならなんとかして欲しい。 既に人一人を殺した事実をまるで忘れたかのように詩音は切に願った。 だが、やはり何も助けは入らない。 ブレンヒルトもナナリーも当てに出来ず、何か出来たとしても詩音を助ける事はないだろう。 こうなればなんとか自分の力で切り抜けるしかないか。 絶対に出来る――という自信はどうにも持てなかった。 あまりにも暴力的な、経験した事のない恐怖を撒き散らすラッド。 そんな彼が、今から自分を殺そうとやってくるのだ。 落ちつけるわけがない。 只、一歩づつ近づいてくる死の足音に震える事しか出来ない。 そう思った瞬間――地割れが起きた。 赤子の産声を思わせる地響きがどこからか聞こえる。 なんだ。一体何が――何が起きた。誰もが思ったであろう疑問。 「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおい……マジかよ」 逸早く反応したラッドが叫ぶ。 驚きを一切隠さない、純粋な感情がそこにあった。 何故か心躍るような声色で、何かに期待する様な眼差しで。 ラッドは“そいつ”に向けて言葉を吐き捨てる。 「どうなってんだ、こいつはよおーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」 二本の腕が見える。 只の腕ではない、人一人分くらいの長さは楽に越えている。 しかもその腕は地面から生えている。 咄嗟に詩音が慌てて跳び退いた。 詩音の直ぐ傍、何故かその場に立っていたナナリーの直ぐ下から、腕が出てきたのだから。 大地を突き破り、大空の元へ出てやろう――そんな印象を思わせる。 やがて、ナナリーの背後で六つの目を持った顔が浮かんだ。 「マークネモッ!!」 それは新たな可能性――未来を司る存在。 ◇ ◇ ◇ 時系列順で読む Back 伏せられた手札 Next ――――code geass 投下順で読む Back 伏せられた手札 Next ――――code geass Back Next You can,t escape! ナナリー・ランペルージ ――――code geass You can,t escape! ブレンヒルト・シルト ――――code geass You can,t escape! 園崎詩音 ――――code geass You can,t escape! ミュウツー ――――code geass You can,t escape! ラッド・ルッソ ――――code geass
https://w.atwiki.jp/rahukire/pages/32.html
聖域の住人。2章では父であり聖域の長であるラティオサに反発し聖域を去る。 大学の事件にてセレビィ♀・ラティアス♀と一緒にマリル軍を攻撃し、アブソル♂と協力する(TNT爆弾利用)。 その後、ミュウツー・ケーシィ老師に呼ばれ、彼らとともにテレポートにを使い学生を脱出させる。 主に関係のある相手 ラティオス♂(ラティオサ) 父 ラティアス♀ 妹 セレビィ♀ 親友 アブソル♂ ミュウツー♂? ケーシィ老師? 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/marurowa/pages/308.html
You can,t escape! ◆TEF4Xfcvis がたがたと、人の手が届いていない山中を車輪が進む音がする。 舗装された道でない以上その音は舗装された道路とは比べ物にならない。 「ごめんねナナリー、また汗かくようなことになっちゃって……」 「いいえ、構いませんよ」 朝になり、日の光は森の木々を通り抜け遥かに明るくなっている。 だがしかしこういった森で聞こえるはずの鳥の声や虫の音は全く聞こえない。 すなわちこの場で音を出すのは彼女たちだけであり、その事実がより一層警戒心を際立たせる。 ゆっくりと静かに、それでいて迅速に彼女たちは行動する。 当てなどない。そもそも今は目的地と言うのが存在しない。 今はただ迫りくる敵から逃れることが重要なのだから……。 少し急な坂を下り、なるべくまっすぐに、まっすぐに進んでいく。 コンパスで方角を確認しながら木々を避けた時のズレを修正していく。 ブレンヒルトの頬を汗がつたう。 あの男は倒した。それで障害は消えたかもしれない。 だが、あの場に他に誰かがいなかった可能性が否定できるだろうか? それにいなかったとしても何時までもあの場に留まってはいられない。 死体を片づけたとしても痕跡は消せないだろうし、その場に留まっている者が疑われるのは至極当然だ。 その場合、事が穏便にいくとは考えにくい。 だからこそ温泉から離れる必要があったのだ。 今はナナリーを守ることを優先としている以上、なるべくリスクの少ない方法を選ぶ。 それがブレンヒルトの選択だった。 ネモは、ブレンヒルトの左腕を睨む。 不自然にそこだけ切れた袖。そこにこびりついた血は明らかに不自然だ。 付き方から考えて彼女の血であるのは間違いないだろう。 しかし、傷が見当たらないのはどういうことか。 ネモはそこから考えられることを推察した。 (おそらく温泉宿を出る前に何者かとの戦闘があった。その何者かがいないことを見ればこの女がどうにかしてそいつを行動不能にしたか 殺したか……いや、結果は問題ではない。問題は左腕の傷をどうやって治したかということだな) ブレンヒルトはネモの存在を知らない。 そのために左腕の痕は隠す必要はないと考えたのだがそれが逆に仇となり、当人の知らぬところでネモに不信感を抱かせることとなった。 だが、即座にネモはナナリーに知らせることはできない。 知らせたとしても、果たして聞き入れるかどうかは定かでない。 (言ったところで……だな。こんなものはナナリーにとっては瑣末な問題でしかないだろう。この女に対する信頼は揺るがないな) 半ばナナリーへの説得をあきらめかけていたネモはやれやれといった感じで目を潜める。 いずれにせよ行動が限られている以上ネモの出来ることはブレンヒルトの行動に気を配るしかない。 「ブレンヒルトさん、何か聞こえます……誰かの歩く音が」 「え?そんな……!」 想定内ではあるがあまりにも早い遭遇にブレンヒルトは内心で焦る。 温泉宿から出たのを尾行されていたならまだ救いはある。 しかしもし今近くにいるだろう存在が宿の中にいて自身の行動を見られていたならば。 「―――――……来ます」 ガサリ、ガサリと樹上から音がする。 ナニカが木を伝って近づいているのか。 ソレは、静かに彼女たちの目の前に降り立った。 彼女らがその姿に瞠目させられたのは言うまでもない。 フォルムとしては人型をとってはいるが、それでもなお人間とかけ離れた姿をしている。 いわば、ソレは異形の者だった。 話しかけようにも、言葉が通じるかどうかが怪しい。だが、するだけ無駄なことだろう。 なにしろソレは明らかに敵意を放っていたのだから。 ミュウツーは手に携えている十字槍の切っ先をブレンヒルトたちに向ける。 それに対し、ブレンヒルトは辛辣な面持ちで、ネモは冷ややかな目で十字槍を見つめた。 目の不自由なナナリーには知れぬことだがミュウツーが持っている十字槍は明らかにブレンヒルトが 所持していたものだった。それを今、ミュウツーが持っているということはブレンヒルトとミュウツーが 少し前に出会っていたという考えに至るのは難しくはない。そしてそこから想像できることはナナリーにとって プラスになるものでないのは確定的だ。 (とにかく今はナナリーを守ることを考えないとな。マークネモを召喚させれば危機は脱出できるだろうが……) 一方でブレンヒルトは自身の軽率さを悔いる。 武器を回収し忘れてみすみすそれを他の敵に奪われるなどあってはならないことだった。 (もう仕方ないけど……今はナナリーを守ることを考えないと。でも庇いきれるかどうか……) 結論に至る経緯は違えど、ブレンヒルトとネモの心情はナナリーを守ると言う意見で一致していた。 ブレンヒルトはゆっくりと左腕を前に突き出す。 ミュウツーはその動作を見ると、一歩前進した。 両者の距離はほんの4メートル。 再び、ミュウツーが左足を前に出そうとすると 「発ッ見ええぇぇぇぇぇぇーーーん!!」 この場にいる誰のものでもない声が響き渡る。 驚きはしたものの、声の方向をつかむや否や全員がそちらの方向を向いた。 ナナリー達の後ろの坂の上10程のところに、その男はいた。 間髪入れずに何かが発射される音がする。 それが男の持っているバズーカからの発射音だと気づいたときにはすでにブレンヒルトはナナリーの体を 抱きかかえて飛び退いていた。少し遅れて、ミュウツーもバックステップで後退する。 ドン、と。 激しい着弾音を響かせ四方八方に土塊が飛び散る。 出来たクレーターの深さからその威力の凄まじさが伺えるが傷を負った者はだれ一人としていない。 男が現れてから弾丸の着弾までわずか2,3秒しかなかったが、彼女たちの避難は実に速やかなものだった。 自身の身体能力に少し驚きながらも、ブレンヒルトは男の姿を再度確認して舌打ちをする。 (なんて異常な……どうやって倒せっていうのよ) そう思うのも無理はなく、ラッド・ルッソはピンピンしていた。傷はおろか血痕や服の汚れさえも残っていない。 四肢を斬られ、腹を抉られようとも彼が『不死者』である限りあの程度の傷では殺すことは敵わない。 何にせよ、これでブレンヒルト達の状況はさらに悪化した。 敵二人に対して動けるのは一人のみ。もう一人を守りながら戦うというのはどう考えても無理がある。 だが、幸いにもまだ道は残されている。 坂を滑り降りてくる男。 クレーターから離れた所にいるよくわからない生物。 そして車輪が壊れて横たわっている車椅子。 (今重要なのは、ナナリーを守ること……!!) ブレンヒルトはナナリーをナナリーの膝下と両肩を抱え込むと、咄嗟に彼方へと駆け出した。 (……逃がすものか) ミュウツーもすかさず少女たちを追いかける、が。 後ろから迫ってくる殺気に止まらざるを得なかった。 反射的に槍を両手に構えて迎え撃とうとする。と、強烈な振動を感じた。 男は狂喜を浮かべながらミュウツーに肉薄する。 あろうことか、男はバズーカの砲身で直接ミュウツーに殴りかかっていたのだ。 (くっ……貴様……!!) 「あの女も殺してぇけどよお……逃げられちまったし。まあ足跡追えば済む話だしなぁ! つーわけで今目の前にいるてめえをブッ殺す!!」 ラッドは一度ミュウツーから離れるとバズーカをミュウツーへと向ける。 至近距離からの砲撃。実際、避けるのはそれほど苦ではない。 ただし、現状障害物が大量にあるためにそれに当たった場合二次的な被害を避けられるかが問題だ。 二度目の発射音。 案の定、ミュウツーは回避できたが後ろの木に着弾した。 その衝撃により木端が飛び散り、周りの木の枝をも破壊していく。 ミュウツーも無傷ではいかなかったようでところどころ擦り傷が見られる。 「おーし上等!この程度でくたばっちゃあ面白くねえよなあ!ああ!? それにしてもテメエはなんだ?人間には見えねえし、かといって獣でもなさそうだ。 ならあれか、てめえも宇宙人か!?そうだよな!?いいぜ!なんだろうがぶっ殺してやるよ!!」 高らかに嗤う男を睨み、ミュウツーは怒りをおぼえた。 痕跡を消したうえでもなおこちらに向かってきた男。偶然ではあるだろうがそれでも許せないことだった。 だが、殺すわけにもいかない。この男にはまだ利用価値がある。 (仕方ない……追ってこれないような状態にしてやる) ※ ※ ※ ※ ※ 線路が見えてきた。 思いのほか遠くまで走ったものだと当人は感心していた。 ゆっくりとスピードを落とし、息を整えながら足を止めてナナリーを下ろした。 「ブレンヒルトさん……すごいですね」 「ん?そうかもね……」 うわ言のように返事をしたが確かに、ブレンヒルトは自身の体の異状を感じ取った。 人一人抱えて2キロ近くを走ったにもかかわらず、通常同じ距離を走った程度にしかバテていない。 (これの……せいかな) ARMSの核を移植した左腕。 ナナリーを守れたのだ。その点では嬉しくはある。 だが、自身が自身でないような気に襲われて何とも言えない気持ちになった。 「車椅子のことは……」 「いいえ、気にしてませんから……。でも、ありがとうございます」 「いいのよ、お礼なんか言わなくても」 しかし、これからどうするか。 行く当てなどない。この途方もないフィールドでの人探しもかなりの労力を要するだろう。 (あっちに行ってみようかしら……) 遠くに見えるのは住宅街やビル街だ。 あそこなら或いは……いや、誰も見つけられなくとも安全な隠れ家にはなりそうだ。 視点を変えると、人らしき姿が見えた。 川を越えようと自転車を押しながら鉄橋を渡っているようだ。 「ナナリー、誰かいるみたい。どうする?」 「えっ……どうすると言われても……」 「……とりあえず話しかけてみましょうか」 見る限りでは、危険はなさそうに見える。 辺りをキョロキョロと見回してはいるが、仕方のないことだろう。 ブレンヒルトは汗を拭うとナナリーを背負ってそちらの方に向かった。 ※ ※ ※ ※ ※ 戦闘が開始されてからすでに10分が経過していた。 ミュウツーが繰り出す槍は確かに相手の体を掠め、傷をつくっていくのだがそれがみるみるうちに治癒してしまい 体力を削るといったこともできない。 一方で、ラッドは自身の傷を省みることなく猪突猛進にミュウツーへと突撃する。 「どうした?普通じゃねえのは姿だけか!?」 相手は人間だというのになかなか隙を見つけることが出来ない。 あくまでも人間の範囲内だがこの男はそれなりに、強い。 とにかく、この男を止めるには大ダメージを与えるといった方法では間に合わない。 「あ」 ガクンとラッドの体勢が崩れる。 原因は、最初に撃ちこんだ時にできたクレーターに足を取られたからだった。 それは殆んどないに等しい時間だったが勿論その隙を見逃すミュウツーではない。 「んぶっ!!」 突如現れた巨大なスプーンがラッドの顎に直撃した。 骨の砕ける音と同時に彼の体が宙に浮き上がる。 それでもラッドは標的から視線を逸らさない。 かまわずミュウツーは今しがた召喚したスプーンを消すと両腕をラッドに翳す。 「!!?」 得体のしれない衝撃がラッドを襲う。 まともに声を出すことすらできず、彼は不可視の攻撃に全身を吹き飛ばされた。 木に叩きつけられ、彼の口からは血が零れる。 それは単にぶつかっただけの衝撃ではない。 彼の体には深々と木の枝が突き刺さり、背中から腹へと貫通していた。 (あーあ、予想以上に普通じゃなかった見てえだなぁ……) 突如現れたスプーンにクリ-ンヒットした。ここまではいい。 まだラッドの対処できる範囲内だ。 事実、隙を作ったのもわざとで、一発程度ならどんな攻撃でも耐えられると踏んだ上でバズーカの引き金を引いたのだ。 しかし結局、なにかよくわからない力によって砲撃もろとも弾かれて現在に至ったのだ。 ふと、ミュウツーが睨みつけているのがわかり、ごほ、と溜息をついた。 「あァ?何見てんだコラ。俺が串刺しになってんのがそんなに面白いか?」 ソレは地面に落ちている十字槍を拾うと、そのままラッドに踵を返して走り出した。 「は……?」 当然、ラッドにしてみればアレは自分を殺しに来ると思っていた。 だがその予想は簡単に外れ、そのままミュウツーは森の奥に見えなくなった。 まさか自分がこのまま死ぬと思ったわけでもあるまい。 ラッドの治癒力ははっきりとミュウツーにも捉えられている。 また、情けをかけそうにもない気迫をラッドも感じ取っていた。 「あー、つまり。この俺を利用したってことか」 とりあえずラッドを一時的に動けない状態にして、自身は追跡できないところまで逃げる。 後でラッドに出会ったとしてもその時は殺せばいい。 「ああそうかい、ハナからそのつもりだし、別にいいけどよぉ…… ……ただし宇宙人。次会った時テメエの命はねえってのはわかってるよなあ!?」 ラッドの咆哮が轟く。 無論、誰も応える者はいない。 「痛えなオイ……抜けるのに結構かかりそうだなこりゃ」 ラッド・ルッソは、未だ串刺しになったままである。 【B-7/ 森/一日目午前】 【ラッド・ルッソ@BACCANO!】 [状態]:腹部貫通(木に串刺し)、顎の骨骨折、全て再生中 不死者化 [装備]:ワイパーのバズーカ@ワンピース、風貝@ワンピース [道具]:基本支給品一式 [思考・状況] 1:あのギラーミンとかいう糞野郎をぶっ殺す。 2:そのためにこの会場にいるやつを全員殺す。とにかく殺す。 3:ギラーミンが言っていた『決して死ぬ事のない不死の身体を持つ者』(不死者)は絶対に殺す。 4:宇宙人(ミュウツー)も次に会ったら殺す。 5:左腕が刀になる女(ブレンヒルト)も見付けたら殺す。 6:ギラーミンが言っていた『人間台風の異名を持つ者』、『幻想殺しの能力を持つ者』、『概念という名の武装を施し戦闘力に変える者』、『三刀流という独特な構えで世界一の剣豪を目指す者』に興味あり。 【備考】 ※麦わらの男(ルフィ)、獣耳の少女(エルルゥ)、火傷顔の女(バラライカ)を殺したと思っています。 ※自分の身体の異変に気づきましたが、不死者化していることには気付いてません。 ※ ※ ※ ※ ※ ※ 混乱していた意識を冷静にさせたのは、一つの爆発音だった。 それはかなり遠くからのものだったがそれでも少女が意識を向けるには十分な大きさだったようだ。 自転車にブレーキをかけ、そして草原あたりで停止。 メイド姿の女が追ってきていないことを確認し、ほっと一息をつく。 彼女が思ったことは、とにかく森の中はこりごりだということだ。 街中であれば隠れ場所もいくらでも見つかるだろう。これだけ広いのだ。突然バッタリと出会う、なんてことも少しは減るかもしれない。 そうしてしばらくの間息を整え、街へ向かおうと目前の鉄橋へと向かった。 少女が走ってくる人間に気づくのは、そう遅くはなかった。 それが自分に向って走って来ているのだと気づいたとき、若干のパニック状態になる。 疲れが癒えていないのも気にせずすぐさま自転車に跨り、その場から逃げようとした。 ふと、そこで少女は思いとどまる。 (とりあえずは一緒に行動すればいいんじゃないかしら?) そう思ったのは、走ってくる人間の姿がはっきりと確認できた時だった。 自分とそれほど年が変わらないほどの女子が、それより少し幼そうな女の子を背負っている。 武器を持っている様子でもない。おまけに、遠くから気づかれるためであるかのように走ってきた以上目的は戦闘ではないだろうと踏んだのだ。 なにより、とにかく一人では心細かったし、数人でいれば囮にして逃げきることも可能かもしれない。 園崎詩音は、足を止めた。 自己紹介やその他もろもろの情報交換はスムーズに終了した。 詩音が見る限りでは、どちらも一般人に思えた。 しかしブレンヒルトと名乗った少女の方は体力面からして勝てないと判断した。 だが、武器らしい武器は所持していない。ならば隙をついてどちらも殺すことは出来る。 だが今はその時ではない。一番いいのは、彼女たちが囮になってくれるということだ。 詩音は自身の名前を名乗った。 姉の名前を語ろうかとも考えたが、万が一、次の放送で魅音の名が呼ばれることになっては堪ったものではない。 体力が回復するまで現状は穏やかに過ごしていたかった。 自身の武器については嘘をついた。 手を生やせる能力については語らなかったし、月霊髄液は見せることはしたもののあくまでも自身の防御にしか使えないと言った。 目の前の二人を利用する気はさらさらないし、そんな意味もない。 (安心して。次の放送が来るまでは、あなた達を生かしておいてあげるから……) 詩音にとって二人は町に着くまでの『盾』でしかない。 一緒に行動することになったとはいえ、向こうも少なからず警戒しているようだったがそれも問題ない。 然るべき時が来たら始末する。園崎詩音はそう決定した。 詩音の思惑はうまく行くかもしれない。 あくまでも、情報が交換した通りのものであればの話だが。 (腕のことについては話してないけど……別にいいよね) ブレンヒルトとて、こうしている以上自身の手の内を全て明かすようなことはしない。 おそらく向こうも何か隠しているのだろうと判断したうえでのことだ。 (この女も怪しい……) ネモはあからさまに詩音を睨み続けているが、気づかれることはない。 とにかく、会う奴会う奴が信用ならない。 6時間のうちに15人も死んでいるのだ。この女が、殺人者かもしれないと自然に考えてしまうのも当然だ。 そういう意味であれば、ブレンヒルトは詩音よりはまだほんの少しだけ信用のある人間だった。 鉄橋を渡り、彼女たちは町の方へと移動する。 それを見つめる者が、一人。 (見つけたぞ……) ミュウツーは今度こそという思いで鉄橋の方へ駈け出した。 【C-5/鉄橋/1日目 午前】 【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に】 【装備】:レッドのMTB@ポケットモンスターSPECIAL 【所持品】:基本支給品一式 、月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)@Fate/Zero 【状態】:、疲労(大)、右肩に裂傷、出血(軽)、右腕に打ち身(軽)、能力者<ハナハナの実> 【思考・行動】 1:優勝して、悟史のところへ戻る。 2:街に行って安全な場所に隠れるまでブレンヒルトとナナリーを『盾』にし、次の放送以降に殺す。 3:魅音の名を騙る。 4:沙都子に対して……? 【備考】 本編終了後からの参加 ※ハナハナの実の能力を得ました。任意の場所(自身の体含む)に、自分の部位を生やす事ができる。 生やせる部位は、制限により『腕』のみ。 今は『腕』を2本、それも互いにそれほど離れた位置には生やせません。 ただし成長の余地あり? また、生やした全ての部位に意識を向けるので、慣れていない状態では単純な動作しかできていません。 生やせる場所は、使用者を中心に15メートルの範囲内に制限。 生やした部位がダメージを受ければ、本人にもダメージ。 ※ブレンヒルトとナナリーには本名を名乗りました。 ※ナナリー達と情報交換をしました。(ハナハナの実の能力については話していません。月霊髄液についても自身の防御しかできないと嘘をつきました) 【ナナリー・ランペルージ@ナイトメア・オブ・ナナリー】 [状態]:健康 [装備]:全て遠き理想郷(アヴァロン)@Fate/Zero、、ネモ [道具]:支給品一式 [思考・状況] 0:街へ向かう 1:ブレンヒルトを信じる 2:バトルロワイアルを止める ※ナナリーを守る。ブレンヒルトと詩音は信用しない(ネモの思考) ※参戦時期はサイタマ事変前 ※『全て遠き理想郷』はある程度の防御力の強化、受けたダメージのワンランクの軽減、治癒力の向上に制限されている。 【ブレンヒルト・シルト@終わりのクロニクル】 [状態]:疲労(中)、左半身に火傷(小)、左腕欠損(ARMSで代替) [装備]:汗で湿った尊秋多学院制服(左袖欠損)、ARMS『騎士(ナイト)』@ARMS(左腕に擬態) [道具]:支給品一式、アンフェタミン@Fate/Zero [思考・状況] 1:詩音と街へ向かう。 2:詩音を警戒しつつ、ナナリーを守る。 3:1st-G概念を行使できるアイテムを手に入れる ※森林破壊者、男湯銃撃者を警戒しています。また双方とも別人だと思っています。 ※ARMSコアの位置は左胸です。 ※ARMSについては詩音には話していません。 【C-6/草原西端/1日目 午前】 【ミュウツー@ポケットモンスターSPECIAL】 【状態】:疲労(中) 【装備】:機殻剣『V-Sw(ヴィズィ)』@終わりのクロニクル、アデルの十字槍@BACCANO! 【所持品】:基本支給品一式、不明支給品0~1個(確認済み) 【思考・行動】 1:マスター(カツラ)を救う為、24時間以内に参加者を32人以下まで減らす。 2:女達(ナナリーとブレンヒルト)を追う。 3:男(ラッド)には殺害数を稼いで貰う。殺すのは後回し。 3:魅音かハクオロが細胞を移植し、自分を追ってきたら相手をする。 ※3章で細胞の呪縛から解放され、カツラの元を離れた後です。 念の会話能力を持ちますが、信用した相手やかなり敵意が深い相手にしか使いません。 ※念による探知能力や、バリアボールを周りに張り浮遊する能力は使えません。 ※傷は80%ほどまで治癒しました。 ※名簿を見ていないため、レッド、サカキの存在を知りません。 ※放送により、イエローの死亡を知りました。 ※ギラーミンに課せられたノルマは以下のとおり 『24時間経過するまでに、参加者が32人以下でない場合、カツラを殺す。 48時間経過するまでに、ミュウツーが優勝できなかった場合も同様。』 ※カツラが本当にギラーミンに拉致されているかは分かりません。偽者の可能性もあります。 ※V-Swは本来出雲覚にしか扱えない仕様ですが、なんらかの処置により誰にでも使用可能になっています。 使用できる形態は、第1形態と第2形態のみ。第2形態に変形した場合、変形できている時間には制限があり(具体的な時間は不明)、制限時間を過ぎると第1形態に戻り、 理由に関わらず第1形態へ戻った場合、その後4時間の間変形させる事はできません。 第3形態、第4形態への変形は制限によりできません。 ※男(ラッド)と戦った相手が「左腕が刀になる女」であると知りました。 ※車輪が破壊された車椅子がB-7の森にあります 時系列順で読む Back 合言葉はラブアンドピース(後編) Next 180秒 投下順で読む Back 忍び寄る悪意 Next 180秒 Back Next Give me a power! ナナリー・ランペルージ ――――――geass Give me a power! ブレンヒルト・シルト ――――――geass Give me a power! ラッド・ルッソ ――――――geass Give me a power! ミュウツー ――――――geass エル・ブエロ・ガザ・デ・フローレンシア 園崎詩音 ――――――geass
https://w.atwiki.jp/multiple/pages/427.html
◆hqLsjDR84w氏が手がけた作品 NO. タイトル 登場人物 0205 第四回放送 ギラーミン、キース・ブラック、キース・グリーン、キース・バイオレット、キース・シルバー 0209 オレはここに在り ミュウツー、ライダー、御坂美琴、キース・ブラック、キース・グリーン、キース・シルバー 登場させたキャラ 2回 キース・ブラック、キース・グリーン、キース・シルバー 1回 ギラーミン、キース・バイオレット、ミュウツー、ライダー、御坂美琴 作品に寄せられた感想 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/rahukire/pages/33.html
聖域の住人。兄のラティオス♂とともに聖域を出る。 聖域の住人。2章では父であり聖域の長であるラティオサに反発し聖域を去る。 大学の事件にてセレビィ♀・ラティオス♂と一緒にマリル軍を攻撃し、アブソル♂と協力する(TNT爆弾利用)。 その後、ミュウツー・ケーシィ老師に呼ばれ、彼らとともにテレポートにを使い学生を脱出させる。 主に関係のある相手 ラティオス♂(ラティオサ) 父 ラティオス♂ 兄 セレビィ♀ 親友 アブソル♂ ミュウツー♂? ケーシィ老師? 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/pokecharaneta/pages/17105.html
ストリングス〜愛と絆の旅路〜 登場人物 コメント 『ストリングス〜愛と絆の旅路』(ストリングス あいときずなのたびじ)は、2007年4月28日に日本で公開された映画。デンマークでは、2005年9月9日に公開された。 登場人物 カゲボウズ:ハル サーナイト:エリト メレシー:ガラク ミュウツー:カーロ 声優繋がり コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る 草案 登場人物 サーナイト:エリト メレシー:ガラク ミュウツー:カーロ 声優繋がり -- (ユリス) 2019-11-02 19 47 56
https://w.atwiki.jp/pokecharaneta/pages/290.html
ブライストはガロウィンと御三家繋がりでバクフーンでもいいんじゃないかな。 あと、パイロットとか考えてみました。 ミュウツー:秋津マサト ミュウ:木原マサキ 遺伝子繋がりだけど、同一をイメージするならミュウツーに統一してもいいかも。 サーナイト:氷室美久 プラスル・マイナン:シ姉妹 ミロカロス:葎(「美しい」繋がりで) ギラティナ:幽羅帝 レックウザ:ハウドラゴン -- (名無しさん) 2010-07-25 22 46 01 バーストンにギガイアスとか 山っぽいしロックブラスト、撃ち落しでミサイル表現 -- (名無しさん) 2011-01-09 19 49 34 草案 登場人物 フーディン:氷室遼三 ドンカラス:ゴルシード -- (ユリス) 2016-06-04 18 18 45
https://w.atwiki.jp/pokecharaneta/pages/2169.html
東京ミュウミュウ ミュウミュウ桃宮 いちご/ミュウイチゴ 藍沢 みんと/ミュウミント 碧川 れたす/ミュウレタス 黄 歩鈴/ミュウプリン 藤原 ざくろ/ミュウザクロ キメラアニマR.D.A(レッド・データ・アニマル) コメント 日本の漫画作品であり、及びこれを原作としたテレビアニメ、ゲームなどのメディアミックス作品。 ミュウミュウ 桃宮 いちご/ミュウイチゴ タイプ:フェアリー エネコロロorレパルダス ムンナ:可愛い系で総一するなら。 エネコ:同上。子猫。 ピクシーorプクリンorフレフワン:フェアリータイプで総一するなら。 ニンフィア:同上+ブイズで総一するなら。 プリン:同上(ブイズ以外)+ももクロで総一するなら。 エムリットorミュウ:伝説・幻のポケモンで総一するなら。 ビビヨン(はなぞののもよう)or色違いのヘラクロス:虫ポケモンで総一するなら。 ズガドーン:ウルトラビーストで総一するなら。 性別:♀ 性格:ようきorむじゃき 個性:おっちょこちょい 藍沢 みんと/ミュウミント タイプ:みず メロエッタ(ステップフォルム)orチルタリスorイキリンコ(ブルーフェザー) マリルリ:可愛い系+フェアリータイプで総一するなら。 グレイシア:ブイズで総一するなら。 ヒトカゲ:ももクロで総一するなら。 アグノムorマナフィ:伝説・幻のポケモンで総一するなら。 ビビヨン(マリンのもよう)orアメタマ:虫ポケモンで総一するなら。 ウツロイド:ウルトラビーストで総一するなら。 性別:♀ 性格:なまいきorいじっぱり 個性:きがつよい 碧川 れたす/ミュウレタス タイプ:くさ ジュゴン エルフーン:可愛い系+フェアリータイプで総一するなら。 リーフィア:ブイズで総一するなら。 フシギダネ:ももクロで総一するなら。 セレビィorシェイミ:伝説・幻のポケモンで総一するなら。 ビビヨン(ていえんのもよう)orハハコモリ:虫ポケモンで総一するなら。 テッカグヤ:ウルトラビーストで総一するなら。 性別:♀ 性格:てれやorおとなしい 個性:とてもきちょうめん 黄 歩鈴/ミュウプリン タイプ:でんき ゴウカザル エイパム:可愛い系で総一するなら。 デデンネ:フェアリータイプで総一するなら。 サンダース:ブイズで総一するなら。 ピカチュウ:ももクロで総一するなら。 ユクシーorジラーチ:伝説・幻のポケモンで総一するなら。 ビビヨン(たいりくのもよう)orバチュル:虫ポケモンで総一するなら。 カミツルギ:ウルトラビーストで総一するなら。 性別:♀ 性格:やんちゃ 個性:イタズラがすきorこうきしんがつよい 藤原 ざくろ/ミュウザクロ タイプ:エスパー ルガルガン ロコン:可愛い系で総一するなら。 バウッツェル:フェアリータイプで総一するなら。 エーフィ:ブイズで総一するなら。 グレッグル:ももクロで総一するなら。 ゲノセクト:伝説・幻のポケモンで総一するなら。 ビビヨン(みやびなもよう):虫ポケモンで総一するなら。 ツンデツンデ:ウルトラビーストで総一するなら。 性別:♀ 性格:れいせい 個性:ぬけめがない キメラアニマ <旧作限定> アシレーヌ 第5話のアシカ型キメラアニマ レパルダス 第6話のヒョウ型キメラアニマ(不意打ち、バークアウト必須) エレザードorエンニュート 第7話のサンバ(チャージビーム、ドラゴンテール、パラボラチャージ必須) フローゼル:第8話のバチガッパ 色違いスワンナ:第9話のコクチョウ型キメラアニマ ナマズン 第10話のナマズ型キメラアニマ クロバット 第10話のコウモリ型キメラアニマ ドンカラス 第10話のキメラカラスグレート アーボック:第11話のガララ ユニラン系統:第13話のキメラドリア ビビヨン(たいようのもよう):第14話のバタフライ ウツボット:第15話のウツボカズラ バチュル:第16話のミジンコ型キメラアニマ コイキング:第17話・第18話のフナ型キメラアニマ ユキカブリ:第17話・第18話の大根型キメラアニマ ドククラゲ:第19話のクラゲ型キメラアニマ ナマコブシ:第19話のナマコ型キメラアニマ ドヒドイデ:第19話のヒトデ型キメラアニマ バチンウニ:第19話のウニ型キメラアニマ バシャーモ:第20話のニワトリ型キメラアニマ カメックス:第21話のカメ型キメラアニマ テッカニン:第22話のキメラミンミン ダイカイデン×2:第23話のグンカンドリ型キメラアニマ アバゴーラ:第24話のキメラタートル ドリュウズ:第25話・第26話のキメラモグラ ペルシアン:第29話のシャムネコ型キメラアニマ ドンファンorダイオウドウ:第30話のキメラエレファント フライゴン:第32話のトビトカゲ型キメラアニマ ノクタスorマラカッチ:第33話のサボテン型キメラアニマ ガルーラ:第33話のキメラパンチ アリアドス第34話の蜘蛛型キメラアニマ(糸を吐く、蜘蛛の巣のみにしましょう) ムシャーナ第39話のバク型キメラアニマ アイアントorペンドラー:第40話のケラ型キメラアニマ(ケラはいないので、両者とも穴を掘る必須) テッポウオorヒンバスorヨワシorハギギシリ:第41話の海水魚型キメラアニマ マンタインorミロカロス:第41話のセイレーン型キメラアニマ キングラー:第42話のカニ型キメラアニマ マスキッパ:第43話のハエトリソウ型キメラアニマ オーロット:第44話のキメラタイボク タマンタ:第46話のアカエイ型キメラアニマ ホウオウorギラティナ(アナザーフォルム)orレックウザ:第36話・第51話・第52話の竜型キメラアニマ <ゲーム限定> アーボ アオダイショウ コラッタ アカネズミ ラッタ アカネズミ(大) モグリュー アズマモグラ マッスグマ:アナグマ ジグザグマ(ガラルのすがた):アライグマ メブキジカ(はるのすがた) インパラ ガマガル ウシガエル ズルッグorエレキテルorヤトウモリ カナヘビ パウワウorタマザラシorオシャマリ:カニクイアザラシ カバルドン:カバ カブルモ:カミキリムシ ゴルバット:キクガシラコウモリ マメパト:キジバト フシデ:ゲジ ポッタイシ:コウテイペンギン ブイゼル:コツメカワウソ スカンプー:シマスカンク ジグザグマ:タヌキ ホシガリス:トウブハイイロリス ワルビル&ネイティ:ナイルワニ ホルビー:ノウサギ ミネズミ:プレーリードッグ オドシシ:ヘラジカ ロコン(アローラのすがた):ホッキョクギツネ ツンベアー:ホッキョクグマ ロコンorクスネ:ホンドギツネ エモンガ:モモンガ イノムー:ユーラシアイノシシ R.D.A(レッド・データ・アニマル) タギングル アイアイ コータス アルダブラゾウガメ サンドパン オオアルマジロ ヌオーorドオー オオサンショウウオ バルジーナ:カリフォルニアコンドル エンペルト:キンメペンギン ドードリオ タテジマキーウィ ホルード ニシシマバンディクート ゴーゴート マーコール ゴリランダー:マウンテンゴリラ オーダイル:ヨウスコウアリゲーター コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る 大黒摩季と東京ミュウミュウコラボがほしでる、 -- (ダイチ) 2022-10-01 19 30 18 作者の征海美亜先生が逝去されました。ご冥福をお祈りいたします。 -- (ユリス) 2022-03-16 16 34 50 草案 推奨オシャボ ミュウイチゴ:ラブラブボール ミュウミント:フレンドボール ミュウレタス:ネストボール ミュウプリン:ハイパーボール ミュウザクロ:マスターボール ミュウリンゴ:プレシャスボール ミュウベリー:ヘビーボール -- (ユリス) 2021-10-09 17 39 24 エネコ :桃宮いちご ジュゴン :碧川れたす グラエナ :藤原ざくろ デリバード:赤井りんご -- (名無しさん) 2021-10-06 14 14 34 禁止級伝説で統一するなら ディアンシー:ミュウイチゴ ゼルネアス:ミュウミント ジガルデ:ミュウレタスギラティナ:ミュウプリン -- (名無しさん) 2021-01-14 22 00 42 キョダイマックスのすがたで統一するなら マホイップ:ミュウイチゴ ラプラス:ミュウミント フシギバナ:ミュウレタス ストリンダー:ミュウプリン ゲンガー:ミュウザクロ -- (達人) 2020-07-31 18 14 21 ソードシールド マホイップ:ミュウイチゴ サニーゴ(ガラルのすがた):ミュウミント ワタシラガ:ミュウレタス ワンパチ:ミュウプリン ギャロップ(ガラルのすがた):ミュウザクロ フラビー:ミュウリンゴ ヤバチャ:ミュウベリー -- (ユリス) 2020-02-23 12 10 41 キメラウニ:バチンウニ-- (名無しさん) 2020-01-16 18 00 53 追加 ウルトラビースト フェローチェ:ミュウリンゴ ツンデツンデ:ミュウベリー -- (ユリス) 2019-03-23 22 57 43 600族統一 ヌメルゴン:ミュウイチゴ メタグロス:ミュウミント バンギラス:ミュウレタス カイリュー:ミュウプリン ガブリアス:ミュウザクロ -- (名無しさん) 2018-05-02 23 36 46
https://w.atwiki.jp/pokemoncardgb/pages/19.html
「プロモーションカード」 ほぼコレクション用のカードだが、数を集めて高レアリティデッキを組むこともある。《超エネルギー回収》は普通のデッキにも入る良カード。《サンダーLv68》をはじめとする伝説のカードはその名の通り伝説級の強さ。 カード名 種類 《ウィンディLv34》 ポケモン 《ファイヤーLv37》 《フリーザーLv37》 《ピカチュウLv16》 《ピカチュウLv16》 《そらをとぶピカチュウLv12》 《なみのりピカチュウLv13》 《なみのりピカチュウLv13》 《エレブーLv20》 《サンダーLv68》 《ヤドンLv9》 《ミュウツーLv60》 《ミュウツーLv60》 《ミュウLv8》 《プリンLv12》 《カイリューLv41》 《イマクニ?》 トレーナー 《超エネルギー回収》
https://w.atwiki.jp/yukue/pages/249.html
○○というポケモントレーナーが居る。 かつてタイクーンやブレーンといった、バトルフロンティアに君臨する王者たちを薙ぎ倒した男。それだけに飽き足らず、カントーからシンオウに至るまでの全てのリーグを制覇し、あまつさえ外国にまで乗り込みその強さを如何なく発揮した。 その知識と技量は幅広く、戦略戦術に飽き足らず育成にすらも一言どころか二言も三言もある。「最強」と呼ぶに相応しい。文字通りのポケモンの「天才」と言える男だ。 興奮が収まらなかった。幼い頃に俺が憧れ、尊敬し、そして越えたいと願った。その伝説のトレーナーが、今俺の目の前に居る。禄でもない噂話と切り捨てずにここまで足を運んでよかった。俺は素直にそう思った。 奴は光もほとんど射さぬ洞窟の中、地底湖の中ほどにある大岩に腰掛けて顔を覆っていた。 「ミロカロス。波乗り――」 俺はミロカロスに跨ると、地底湖の上を真っ直ぐに中洲に向けて進んでいった。途中でゴルバットなどが飛び出してきたので、冷凍ビームで撃ち落してやる。羽の凍りついたコウモリはすぐに暗い水底へと沈んでいった。 俺が大岩に足をかけても、奴は身じろぎ一つせずに膝を抱えて顔を伏せていた。まるで親か何かに怯える子供のようにも見える。 「おい――」 俺が何度か呼びかけると、枯れ木のような風貌の奴はさも大儀そうにその顔を持ち上げ た。一瞬、息を呑む。髑髏のように落ち窪んだ双眸とこけた頬。かさかさに乾ききった半 開きの唇からは微かな響きを伴った呼吸が漏れ聞こえる。 痩せて不健康極まりない様相だが、かつて俺がテレビや雑誌で、あるいはポスターで見 かけた奴のかつての面影が残っていた。少なくとも、死体では無かったことに若干の安堵 を覚える。 濁った汚泥のような奴の両の瞳が俺に注がれていた。 「俺はポケモントレーナーの――という者だ。トレーナー、○○。あんたのかつての経歴は知っている。俺と手合わせ願いたい」 俺の言葉にも奴は白痴の様な表情を浮かべたまま、ぽかんと口を開けて俺の顔を見つめ ていた。話が通じているのか不安を覚える程長い沈黙の後、奴は薄気味悪いと感じるほど 歪な笑みを浮かべた。 「……もうポケモンバトルはやってないんだ」 「嘘をつくなよ。じゃあそこにあるのは何なんだ」 さらに近づいてみると分かった。膝を抱きかかえるようにして座っている奴の体の上に は一個のモンスターボールがあった。奴は顔を伏していたのではなく、その一個のモンス ターボールをまるで抱きかかえるようにして座っていたのだ。 しかし、たった一個とは――。かつての奴は常に限度一杯のポケモンを持ち歩いていた し、並み居る強豪たちにも使える限りのポケモンを駆使して戦っていたはず。 目の前に座り込むこの男が表舞台から姿を消し、メディアにも姿を現さなくなって数年。 俺は今更ながらに、この男がどういう軌跡を辿りこんなナナシの洞窟の奥に鎮座するよう になったのか、と漠然とした疑問を抱いた。 はっとする。先ほどまで、震える幼子のように座りこんでいた奴が俺に向かって右手を 差し出していた。立ち上がりたいのか? 俺がその手を取ろうとすると奴は首を横に振っ た。 「ポケモンを……見せてくれ。ボールの、まま……でいい」 自分でも驚くほど素直に俺は自分のポケモンの入ったボールを差し出していた。差し出 したボールには俺の切り札とも呼べるポケモン、ボーマンダが入ってる。物理、特殊の二 刀に加え、積みと呼ばれる自己強化技も兼ね備えた俺の自慢のポケモンだ。 俺の前で奴はさも愛おしげにボールを撫でながら、その中に座する俺の相棒に視線を注 いでいた。 「強い……強いねぇ……。これはぁ――」 奴は小さく息を吐くと俺の手にボールをそっと乗せた。 「……ブリード&リリース、だね?」 「無論だ。固体値はALL31、通称6V。自然には返せない」 俺はボールをベルトに戻しながら答えた。 「ブリード&リリース」とはポケモンの育て方の一つだ。ポケモンにタマゴを産ませ、 そのタマゴを孵す。その子供の個体値が高ければポケモントレーナーが育て、低ければ野 生に帰すというものだ。 個体値というものは、才能とも素質とも言い換えられる。ポケモンが野生で生きる分に は、高個体値というものはそうそう必要なものではない。精々3V程度もあれば群れを作 るにしても、一個体で生きるにしても十分すぎるものだろう。 平均とも言える能力を持つ野生の彼らの中に、6Vや5Vといった頭抜けた個体が溢れ たらどうだろう。強すぎる素質を有する彼らは、ともすれば生態系のバランスを崩しかね ないのだ。さらに野生のポケモンは人を襲うこともままありえる。野生のポケモンは弱い ままで居た方がよいのだ。 本当に強いポケモンが必要ならば、トレーナーが産ませ育てるべし。故に高能力のポケ モンはトレーナーによって管理すべきで、それに満たぬポケモンは自然環境保全のために 野に帰すべき。 野生ポケモンはトレーナーの有するポケモンで倒せる程度に弱く、またその弱さによっ てお互いの環境維持にもなる。この画期的とも呼べるポケモン育成方法を提唱したのは他 ならぬ、ここにいる奴なのだ。 「ブリード&リリース……。ポケモントレーナーにして、ポケモントレーナーと何とかけ 離れたものだろうねえ……?」 「おかしなことを言うな? ブリード&リリースはあんた自身が実践し首唱したものだろ うに」 奴の自虐的な物言いは分からないでもなかった。かつて奴がこの育成方を提唱した時に も「選民的である」「高能力ポケモンを選出など機械や道具と変わらないではないか」と いった反論は至る所から噴出した。 だがそういった反論も、高個体値ポケモンが一匹居るだけで、その地域の生体バランス が危うくなることが証明されると、まるで掌を返すように消えていった。今では高個体値 ポケモンを故意に野に放った場合には罰金まで科せられる。 俺は自分のモンスターボールを取り上げた。そろそろうんざりしてきたのだ。俺はこん な湿っぽい洞窟の奥くんだりまで、ただお喋りにきたわけではない。 「そろそろ始めようぜ」 「……言っただろう。ポケモンバトルはもう、やめたんだ」 奴はさっきまでとはうって変わって、はっきりした声音で拒否した。 「ふざけるな!」 だが俺だって引き下がる心算は無い。俺が強くなったのは。否、俺が強さを目指したの はこの目の前に居る男がいてこそなのだから。 「俺を失望させるなよ! 最強のアンタを追って、俺はここまで来たんだ! アンタと同 じ軌跡を歩んだッ! 全リーグも制覇した。フロンティアも叩き潰したッ。海外にも渡っ た! 後はお前だけだ! ○○ッ! さあ! 俺と戦えッ!!」 「……君は、ポケモンが……好き、かい?」 俺の頭がカッと熱くなるのが分かった。矢も盾もたまらなかった。この期に及んで、こ んな戯言を吐かれるとは――。 気づいた時には振り抜かれた俺の右手が、奴の横っ面を殴っていた。 「……痛い、なあ」 奴の左頬が赤く腫れている。急に殴り飛ばされたにも関わらず、奴の右手には先ほどま で奴が後生大事に抱えていたモンスターボールがあった。 「見ろよ! アンタの右手を!」 俺は咆えた。 「アンタはやめたなんて言っちゃあいるが、その右手に握り締めるモンはなんだよ? ア ンタはポケモントレーナーなんだよ! どこまで行ってもだ! さあ戦え! 俺とッ」 奴はしばし瞳を伏せると、やがて「分かったよ」と小さく呟いた。 「でも……今はこの一体しか居ないからね」 「ならば一対一だ。俺のボーマンダとアンタのポケモン――行くぞ」 「いや……。君は六対全部使うといいよ……」 「笑止! 寝言はボーマンダを倒してから言うがいい!」 ボールから閃光が迸り、光の塊が四足の龍を形作る。光源の中から姿を現した俺の相棒 は高らかに雄たけびを上げた。その声だけで湖面が泡立ち、洞窟が振動する。 対する奴のポケモンは――。 白い外観の人型のポケモン。そいつは俺のボーマンダの両の翼から繰り出される突風を、 まるで奴から遮るようにして立っている。そのポケモンの名前が分かると同時に俺は生唾 を飲み込んで武者震いに震えた。 「――ミュウツー!」 奴は既にミュウツーの後ろに位置する平たい石の上に腰を下ろしていた。指示すら出す 必要が無いというのだろうか? 「舐めやがってッ! ボーマンダ、竜星群」 その時には全てが遅かった。身を切り裂くほどの強い冷気が辺りに充満していた。息を 吸い込んだ瞬間に鼻の奥に鋭い痛みを感じる。俺の視線の先で白銀の氷の飛礫に翼と体を 撃ち抜かれた飛龍が、ゆっくりと力なく水面に倒れ伏していく。 ミュウツーが放った、凄まじいまでの冷気は俺のボーマンダを射抜きその身を凍りつか せたばかりでなく、その湖面ですら凍りつかせていた。 「……今のは吹雪だよ。それと君、鼻血出てる」 俺の足元にぼたぼたと赤い液体が滴り落ちる。白く凝結した岩の上で、その赤は鮮やか に、くっきりと俺の目に映えた。 「戻れ、ボーマンダ! 行けっ、ミロカロス」 ボールから飛び出した水龍は氷の途切れた場所から、素早く水中へと身を隠した。直後 にミュウツーの放った強烈な念波が凍りついた水面をクラッカーの様にグシャグシャに打 ち砕いた。 懐から取り出したデバイスに目をやった俺は驚愕に震えた。すでに俺のミロカロスのH Pは半分を切っている。 「バカなッ――。水中だぞ? 直撃は免れたはず……」 「……お陰で氷も割れた。さあ――ミュウツー」 奴の言葉に応じるようにミュウツーが自身の両の手を胸の前にかざした。瞬間、中空に 唸りを上げる光球が迸る。プラズマ現象だ。気体に電流が流れることにより発生し――。 「ミ、ミロカロス! もどれぇーーーッ」 「……遅い」 巨大な光球から見るものの目を引き裂かんばかりの閃光が走った。湖面が波立ち、煽り を喰らった魚やらが腹を上にしてぷかぷかと浮き上がる。生物としての許容量を遥かに越 える電圧をかけられた彼らの体は破裂し湖面は真っ赤に染まっていた。それらの死体に混 じってぴくりとも動かないミロカロスが水面を漂っている。 ここから先はよく覚えていない。それから俺のポケモンは六匹中五匹が瀕死となり、残 る一匹であるメタグロスも死に際とと言うところで、ようやく奴のミュウツーの技とHP が尽きた。持ってきた回復薬も使い果たし、鞄の中身は既にスプレーと穴抜けのヒモくら いしか残っていない。 立ちはだかる俺の目の前で、奴は満身創痍で横たわるミュウツーを膝に抱いていた。奴 の病人のような様相と奴のミュウツーを覗き込む表情に俺は微かな違和感を覚えた。奴は 自分の傷だらけのポケモンを抱きかかえているはずのに、これっぽっちも心配だとか労り だとかそういった感情が感じ取れなかった。 「強いな……。アンタ、やっぱり強い」 俺の呟きに奴は顔を上げた。奴の顔を見て俺はぞっとした。奴の顔には最初に話した時に 目にしたようなねじれた、見る者が吐き気を催すほどの奇怪な笑みが貼りついていた。 「……おめでとう。僕に勝ったね。おめでとう」 奴はまるで壊れたレコードのように「おめでとう、おめでとう」を繰り返し始めた。録 音した音のように抑揚の無い声だった。奴の手を見て吐き気を催した。奴の手はミュウツ ーの、ああ、ミュウツーの引き裂かれた傷口の上で蠢いていた。奴の指が傷口を穿り返し、 その肉を抉るたびにミュウツーが力ないうめき声を上げる。 俺はぶつぶつと口を動かす奴の手からミュウツーの入っていたボールを奪い取ると、そ の中にミュウツーを戻した。無理やり奴のぬらぬらと赤く濡れる手にミュウツー入りのボ ールを押し付け、その両肩を掴む。奴の両目は俺を見てはいない。肩を握る手に力を込め 無茶苦茶に揺さぶった。 「おい! おい……。どうなっちまったんだよ! あんたは? 俺が憧れてたあんたはど こいっちまったんだよ? いつも輝いてて、強くて、最強で天才のトレーナーだろ? あ んたに何があったんだよっ……どうしちまったんだよ……」 やるせなかった。認めたくなかった。これがかつて俺が畏敬の念を抱き、その高みを目 指したいと思った男なのか。俺が無理に戦いを強要したせいでここまで壊れたのか? い や、初めに話していたときからどこかおかしかった。何がこの人をここまで変えてしまっ たんだ。わからない。わからない、わからないっ。 「……声が聞こえるんだ」 奴の口が動いた。 「……声が……聞こえるんだ。俺たちを、強くしろと。もっともっと強くしろと。声が言 うんだ。もっともっともっともっともぉぉっとぉぉ……おぉっぉ」 「何だ? 声って何だよ? 何を言ってるんだ」 「……おかしいとは……思わないか? 思わなかったか? おかしいんだよ。 おかしい んだ……」 奴の両肩を掴んでいたはずの俺の両手は外れていた。しかし奴から離れられない。奴の 両手が、俺の手首を強く握って離さないのだ。奴の俺の腕を握る手がヌルヌルする。奴の 指の間から、まだ乾いていなかったミュウツーの体液が滲み出た。やめろ。おれの手に滲 みこませないでくれ。 「……おかしいんだ……おかしいんだよ」 「何がっ! 一体何がおかしいって言うんだよっ」 俺は何とか奴の手を振りほどこうともがいた。しかし奴の枯れ木のような手は、まるで 万力のように俺の腕を捕まえて離さない。 「何で……なんでポケモンは戦うんだと思う? 人間に戦わされるんだと思う? 何で人 間は……ポケモン同士を戦わせるんだと思う?」 「知る……知るかよ、そんなことっ。頼むから離してくれよ、なぁ――」 「……なんでポケモンは戦うんだと思う? 戦うんだと思う? 何でだ……?」 「そ、そんなのっ。野生の動物だってみんな戦うだろうがっ? 烏も蟷螂もライオンもゾ ウも、戦うだろ? エサをとるためとか縄張りとか、いろいろあるだろそんなんっ!」 もう俺は泣きそうだった。奴に握り締められた手首から先の感覚がない。そんな状態の 俺にも構わず奴は続けた。 「……野生動物とはちがう。ポケモンは違う、違うんだ。奴らはなぜ、人間の手によって 戦いあうんだ? おかしいだろ」 「闘鶏とか……闘犬とか、居るだろ? ポケモン以外にもさ」 「……そうじゃない。それらは違う。犬の一部とか。鶏の一部とか……限られた種に限ら れる。ポケモンは……違う。ポケモンは、魚だろうと犬だろうと猫だろうと何だろうと、 種族が違っても戦う。餌としてじゃない……ポケモンは被食者が捕食者と戦う。おかしい とは思わないか? 普通、虫はライオンとは戦わない。ライオンも虫と戦わない。だがポ ケモンは……違う――」 「だから……それは、人が――」 「何で人はポケモンをたたかわせるんだぁぁああっぁっっ?」 「知らねえよっ!」 怒鳴った拍子に腕を思い切り振った。先ほどまでの抵抗が嘘のように俺の両腕は奴の手 から解放される。勢い余って、俺は盛大にしりもちをついた。痛む尻を引きずって、奴か ら何とか距離をとる。 奴はまるで糸の切れたマリオネットのように、両手と両足をだらんと伸ばしたまま石の 上に座り込んでいた。追ってくるかとも思ったがどうやらその意志はないようである。そ もそも奴に奴の意志が残っているのかすら怪しいが。 手首にくっきりと残った血の手形をさすっていると、奴がまた口を開いた。 「……不思議に思ったことはないか? あるポケモン同士は……住む場所や生体系、そう いったものが重なれば、たとえ姿かたちが違っても……卵を作ることができる。……ある 特定の、ポケモンは……どんな種族とでも……タマゴを作れる」 奴が何を言いたいのか、俺にはさっぱり理解できなかった。何か奴にとって大事なこと を言おうとしているのは分かった。ただちぐはぐで、つぎはぎで、あいまいで全くもって 理解できない。少なくとも一つだけ分かることがあった。 奴は気狂いだ。つまり奴にとっての大事なことなんて、常人にとっての芥ほどの価値す らない。これ以上話していても無駄だろう。むしろ危険だ。一刻も早く俺はこの場所から 立ち去りたかった。 「……姿かたちがちがっても、子を為せる。まるで……そう……にんげんの、ような……。 昔……博士が言ってた。しんかする……ポケモンは生物として不完全だから、進化する… …のか? ならば進化しないポケモン、は完成形? ……ちがう。そうじゃ、ない」 まだ何かぶつぶつ言っている。無視して俺はかばんの中を探った。穴抜けのヒモの陰に 隠れて、使われなかったげんきのかけらがまだ一つ残っているのに気がついた。 奴のこの様子では、奴のミュウツーがちゃんと回復してもらえるかも怪しい。俺は座り 込んだまま何事か呟き続けている奴から見える位置に、それを置いた。 「ここに……回復薬置いておくからな。早めにミュウツー、回復してやれよ?」 聞こえたのか聞こえなかったのか。奴からは何の反応も無い。諦めて俺は穴抜けのヒモ を取り出した。 「……君は、ポケモンが……好き、かい?」 穴抜けのヒモの準備を終えたところで奴が言葉を発した。思えば戦う前に奴が口にした 質問だ。もう二度と会いたいとも思わないが、かといって無視して帰るのも気が引けた。 「勿論。大好きだ――」 俺の言葉は奴に届いただろうか。穴抜けのヒモの力によって、俺の体はふわりと地面に 開いたワープゾーンの中に吸い込まれていく。 ふと思ったことを俺も尋ねてみた。 あんたはどうなんだ? と。 奴の唇が微かに動く。次の瞬間、俺の体はさんさんと惜しみなく降り注ぐ陽光の下にあ った。自分が出てきた洞窟の入り口を振り返る。真っ暗な口がぽっかりと俺の後ろに開い ていた。もう戻る心算は無い。 俺の好きだった。憧れだったトレーナーは死んだのだ。そう思うことにした。 奴のミュウツーが早めに回復してもらえますように。そう願って俺はナナシの洞窟から 立ち去った。 俺が奴と戦ったあの時から随分と時が経った。 俺は名実共に最強のトレーナーだった。そう、「だった」のだ。今では。 今になってようやく、俺は奴の言っていたことの意味が分かってきたような気がする。 ポケモンは……おかしいのだ。普通の生命体とは違う。貪欲に戦いを求め、異種間同士の 戦いの勝敗に躍起になる。 強さを追い求め、追い続けてようやく漠然と感じるようになった。異種間などではない のだ。人間が学校で学び、社会に出て人々に貢献し、そして人類としての種をより強固な ものへと成長させるように、ポケモンはそれ自体が一つの種族なのだ。だから姿かたちが 異なろうと、生態系の重なりがあれば子を為せる。白人、黒人、黄色人種がお互いにこと をなし子供を産めるように。まるで人間のように。 奴は言っていた。声が聞こえる、と。強くしろと囁く声が聞こえると言っていた。 俺にはそんな声は聞こえなかった。けれど分かるのだ――。俺はポケモンを育ててきた のではない。ポケモンが俺に育てさせてきたのだ。 奴らは人の手によって、その自然に持って生まれた力を伸ばしていく。何世代もかけて。 奴がどうしてあそこまでポケモンバトルを避けていたのか、今ではよく分かる。奴は恐 れていたのだ。ポケモンにとって、自らを強く育て上げられない人間は不要なのだ。 奴はミュウツーだけしか持っていなかったのではなかった。 ミュウツーしか残っていなかったのだ。 自然から生まれ出でたポケモンは生まれながらに本能にして強さを求める。野生動物な らば親から学び、兄弟から学ぶことで生き抜く強さを手に入れるのだろう。だがポケモン は違う。人の手に拠ることで種としての強さを手に入れる。だからミュウツー以外の奴の ポケモンは奴から姿を消したのだ。奴が彼らを育てることを放棄したからだ。 それ故に人の手によって生み出された、自然の及ばぬポケモンだけが奴の手元に残った のだ。それが人工のポケモン、ミュウツー。 自らが育てていたポケモンが、まさか自らが育てさせられていると知った時の奴の驚愕 と絶望はどれほどのものだったのだろう。 ミュウツーを除き、唯一の人工ポケモンであるポリゴンシリーズを連れて、俺は奴の居 たこの場所まで帰ってきた。 ここに戻ってきた時、奴の服を着た骸骨が転がっていた。別れ際、奴は言っていた。 「好きだった」と。俺も同じだ。ポケモンの習性を知ってしまった以上、もう素直にポケ モンを愛せない。俺にも分かるのだ。奴らは自分たちをもっと強くしろと常に訴えている。 ミュウツーの入っていたはずのボールは既にどこかへ消えていた。まあ恐らくミュウツ ーなら野生化しても生きていけるだろう。 人の手によって生み出されたポケモンが、野性としてその生に根を下ろす。ミュウツー もまたポケモンという巨大な単一種の中に組み込まれていくのだろう。 俺はこれから待ち続けるのだろう。かつて奴がそうしたように。 俺が死んだら、こいつらポリゴンシリーズも野生化するのだろうか。だとしたら面白い。 この世界で人間という生き物はまさにポケモンという種を増やし、育むための存在とし て確かに機能していることになる。 トレーナーもブリーダーもいつか世話になった育て屋夫婦も大人も子供も皆、これから もポケモンと共に過ごし彼らを育むのだろう。それがポケモンの遺伝子レベルで組み込ま れた、彼らの生きるための習性であるとも知らずに。 穏やかな地底湖の波音に耳を傾けながら、俺はゆっくりとその瞳を閉じた。 作 3代目スレ 189-203